ちょうど一週間前の話ですが、6月18日付の日刊工業新聞によれば、長野県のSPIエンジニアリングが、自社製品の内視鏡カメラとウィンドウズ搭載のタブレットやパソコンと連携するためのアダプタ製品「HKT-USB」が6月20日に発売とのことです。
企業URL:http://www.spieng.com/
これによって同社が製品化している内視鏡とタブレットやパソコンをUSBで簡単に接続することができます。
実は、SPIエンジニアリングについては、筆者も過去に取材をしたことがあり、その内容は機械設計誌(日刊工業新聞社)の2011年5月号で発表しています。
(「変わるモノづくり現場 第20回 ITによる開発営業戦略の融合で活路を見出す」)
SPIエンジニアリングは、長野県長野市に本拠を構える工業用内視鏡のメーカーです。
工業用内視鏡にニーズは様々なところにあります。
例えば、住宅のリフォームなどの際に誤ってガス管に釘を売ってしまうというようなことがあります。その際に、実際にガス管がどのようななっているか、というチェックに使用したり、あるいはビルで光ファイバーなどを通す管が確かに設計通りに施工されているか、というような場合に、工業用の内視鏡が活躍するのです。
今回の発表によれば、従来は専用液晶モニターが必要なものを汎用のタブレット端末で画像を確認できるようになるということになります。
さて、一見何気なく思える内視鏡とタブレットの連携ですが、ある一点で着目に値します。
それは、顧客にとってコストをかけずに既存のリソースを使って内視鏡のメリットを享受できるということと、自社も無用にコストを削ることなく売上を伸ばしていける可能性があるということを両立できる可能性がある、ということです。
前述の機械設計誌の記事にも書いているのですが、同社はベンチャーで小規模という特徴を活かして、大手の工業用内視鏡メーカーが手をだしてきていなかった、品質を大事しながらも安価で数を揃えなければならない現場向けの内視鏡の開発をして注目され顧客を獲得してきました。
開発においても、小回りがきくことを活かして顧客の声を即製品に反映しながら行なっています。
今回のUSBを使ったアダプターの開発においては、顧客の声がどのように反映されたのか筆者は存じていませんが、そのような声が顧客がから上がっていたとしても全く不思議ではなありません。
現在、あらゆるアプリケーションにおいて画像はソフトウェアで処理されています。そのソフトウェアの多くはWindowsなどの汎用PCで動いているはずだ。また汎用PCも低価格化が進むと同時にグラフィックの性能も向上しています。
つまり、わざわざ専用の液晶モニターを使う必然性がなくなってきているといえるでしょう。
顧客にすれば、そのコストが削減されることは間違いなくメリットだとおもいます。
その一方で、SPIエンジニアリングの強みはやはり内視鏡本体の開発能力であろうと私は考えています。それを考えると専用液晶モニターを使う意味は薄いと考えてもそれほどはずしてはいないでしょう。
それよりも、自社の強みである内視鏡本体に既に充分な性能を持つ汎用品をつなげることは、ある意味で必然なのかもしれません。
このことは他のモノづくりのメーカーにも言えることができるでしょう。
今、自分が当たり前だと思っている専用品による製品構成が実は妥当なのかどうか、を一歩引いて、「もし自分がユーザだったら」と考えてみることも大事です。
ハードウェアにせよ、ソフトウェアにせよ、かつては高価な専用品が必要であったが、今はあらゆるものが安価に調達することができます。本当に専用品が必要だということは少ないのではないでしょうか。
大事なことは「自社のコアな強みである製品本体」と「汎用のソフトやハード」をつなげることで、どのような新しいプロダクトやサービスを生み出すことができるか、ということに気がつくことだと思います。
お客も自分も喜ぶ組み合わせは何なのか?をこれまで以上に考えていきたいですね。
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