2012年7月5日木曜日

Autodesk123dに学ぶ アプリとクラウドの上手なつなぎ方

もう一年近く前にアイティメディアに寄稿した記事「無償3DCADを試す ――そして時代は変わる?」は、現在も継続的にお読みいただけているようです。

ありがとうございます。

そもそも、3Dモデリングをやりたいのに、趣味に大金をかけられない個人はもとより、企業の方も興味があるのかもしれません。

何しろ特に初めて3D CADを初めて買おうとする場合には、3D CADの何たるか、どうやってモノを作れば良いのかもはっきりわからないうちに大金を使うには覚悟がいります。

評価版があるといっても、一ヶ月くらいの評価期間では、普段の仕事をしている間にあっという間に時間が過ぎてしまい、何もしないうちに期限が切れてしまっているということがよくあります。

はい、つい一昨日私がやらかしたことでもあります。

ということで、なにげにAutodesk123Dは便利でお手軽な無償3Dモデラーとして重宝されることになります。

このソフトのユニークなところとして、特に下記の3点がユニークだと思っています。

  • 無償であるにもかかわらず3次元で形状を作るための機能がほぼ完備されている
  • 無償にもかかわらず独自フォーマット以外に業界で使用される他のファイルの入出力が可能である
  • ファイルをクラウドでセーブでき、またみんなで共有できる
先ほど機能制限はないと言いましたが、実は上記の3つの特徴のうち、後の2点をうまく機能制限的に活用しています。

最近、Autodesk123dについての質問を受けることが多いのですが、そのうちの一が

「どうやったらSTEP形式で保存できますか?」
「STL形式で保存したいのにどうしたらよいのかよくわかりません」

というものです。

確かに、Autodesk123dはこれらを売りにしているのに File > Save as とやってもそのようなメニューがどこにもないのです。

123Dを起動しただけでは、独自形式でのファイル保存だけ


実は、これにはわけがあります。

Autodesk123dはベータ9のバージョンから、独自形式以外の形式でファイルを保存する時には、Autodeskのアカウントにログインする必要があるのです。このアカウントは123dをダウンロードした時に作ったアカウントに登録したメールアドレスとパスワードを使用します。

つまり、こういうことです。

Autodeskアカウントにログインする

クラウドに保存できるようになる(ログインしないとグレイアウト)

クラウドに保存した状態(共有するかどうかは選択可能)


独自形式以外のファイルフォーマットもサポートする

印刷メニューから3Dプリントも可能になる


これって実にうまいやり方ですね。アカウントの作成に必要な個人情報はメールアドレス程度です。それも面倒臭ければFacebookのアカウントでも登録できます。

また、このソフトを使うときには出来るだけのこのコミュニティを意識してくださいね、ということを意識もさせてくれる。

あまり意識をさせないで情報を共有させる新しいやり方か!?

普通に保存のアイコンでセーブしようとすると、クラウドのほうにセーブするように導かれます。(もちろんクラウドに保存したからといって、すぐに共有されるわけではありあませんが)

メニューの保存から保存すれば、これまでどおりローカルに保存できます。

また、この状態になって初めて、STLを初めとする他の形式での保存が可能になります。

従来は、期間制限とお金を払わないと解除できなかったものが、クラウドにログインすると使えるようになる、というのは今風のやり方だし、みんなを巻き込みやすいですね。

このような仕組みは社内のような閉じた環境でも色々と応用できそうですね。

例えば、社内でも有効に活用できるのに、個人のハードディスクの中にあって本人以外誰もその存在を知らないとか、はてはハードディスクがクラッシュして貴重な中身そのものがリカバリー不能の状態になってしまった、などということも避けられます。

2012年6月29日金曜日

コンピューター・ウィルスがこっそり貴重な設計情報がつまったCADデータを国外に送っていたら

もし自分の貴重な設計情報がこっそりと国外に送られていたらと考えるとゾッとしますね。

ところが、どうもそれが現実に起きているようですね。

6月28日付けのDesktop EngineeringのKenneth Wong氏の記事によれば、おそらくは業界を問わず最も使用されているであろうAutoCADをターゲットにしたマルウェアがセキュリティソフトを開発するESETにより報告されているとのことです。

単なるウイルスというよりは、産業スパイを目的としたものと考えられるというのがESETの見解です。

ファイルの感染は、よくありがちなパターンのようでウイルスに感染したAutoCADのファイル(DWG)を開くことでPCがウィルスに感染し、中国の163.comというプロバイダに存在するメールアカウントに知らないうちに勝手にAutoCADのファイルが送信されてしまうというもののようです。

すでにAutodeskもこの事実を認識していてESETとともに対策をしているようです。同社のFAQのページにおいても「ACAD/Medre.A Malware FAQ」という形でそのマルウェアについての情報を公開しています。

このマルウェアはAutoLISPを悪用したプログラムで、DWGファイルを開くとSMTPを使ってDWGファイルを送信するとのこと。ちなみに、ウィルス対策ソフト各社によって、Lisp/Blemfox.A (Microsoft), Trojan.Acad.Bursted.W (BitDefender), ALS.Bursted.B (Symantec)という別名があるようです。

ESETの分析によれば、このウィルスの作者は愉快犯というわけではなく、目的が明確で情報を盗み出すことを意識しているように見えるとのことです。

これは特定のCADの特定の形式のファイルを盗み出すことを目的にしています。またピークを超えてからはこのウィルスの活動は落ち着いていりょうです。

とはいえ、自分が当該CADを使っていないから安心だとは全く言えません。

もし、特定の3D CADのデータ形式を盗み出したほうが目的を達すると考えれば、何かそのような方策を実行するでしょう。

Vanity Fairの記事においても、サイバー産業スパイのプログラムは開発され続けていて、いったいどのくらいの企業が影響を受けているのかはよくわからない、という状況です。

ちょっとしたことですが、ご自分がお使いのPCのセキュリティは常に確保されているでしょうか。設計に使用するPCは、ネットワークから切り離されているとしてもやはり注意が必要でしょう。

インターネットに接続していなくてもUSBメモリなどを経由して感染するということはありますし、それにより逆に他にウィルスを自分が拡散させる原因にもなりえます。悪意がなくても不注意な人間系の行動でも情報をばらまいてしまう可能性あります。

マルウェア対策ソフトを常に最新の状態にしておくことは常識として、それだけではなく、私も機械設計誌(2012年7月号)で紹介したセキュリティ対策等の最新情報を得て、検討するなども考える必要があるでしょう。

というのも、自社ですべてのプロセスが完結する、ということはほとんどないでしょう。外部との協力企業と仕事をするということはあたりまえでしょうし、その際にやり取りするものは、どんどんデジタルファイルになっていきます。

今後も、CADを含む自分が使用しているソフトに関連するセキュリティ情報に気をつける他、ウィルス対策ソフトを含む、様々なサイバーセキュリティについての情報に気を配っていきましょう。

感染すれば被害があなたにとどまらず、関係者にも及ぶかもしれませんので・・・。



2012年6月26日火曜日

長野の内視鏡のメーカーが自社の工業用内視鏡と汎用タブレットを連携

ちょうど一週間前の話ですが、6月18日付の日刊工業新聞によれば、長野県のSPIエンジニアリングが、自社製品の内視鏡カメラとウィンドウズ搭載のタブレットやパソコンと連携するためのアダプタ製品「HKT-USB」が6月20日に発売とのことです。

企業URL:http://www.spieng.com/

これによって同社が製品化している内視鏡とタブレットやパソコンをUSBで簡単に接続することができます。

実は、SPIエンジニアリングについては、筆者も過去に取材をしたことがあり、その内容は機械設計誌(日刊工業新聞社)の2011年5月号で発表しています。

(「変わるモノづくり現場 第20回 ITによる開発営業戦略の融合で活路を見出す」)

SPIエンジニアリングは、長野県長野市に本拠を構える工業用内視鏡のメーカーです。

工業用内視鏡にニーズは様々なところにあります。

例えば、住宅のリフォームなどの際に誤ってガス管に釘を売ってしまうというようなことがあります。その際に、実際にガス管がどのようななっているか、というチェックに使用したり、あるいはビルで光ファイバーなどを通す管が確かに設計通りに施工されているか、というような場合に、工業用の内視鏡が活躍するのです。

今回の発表によれば、従来は専用液晶モニターが必要なものを汎用のタブレット端末で画像を確認できるようになるということになります。

さて、一見何気なく思える内視鏡とタブレットの連携ですが、ある一点で着目に値します。

それは、顧客にとってコストをかけずに既存のリソースを使って内視鏡のメリットを享受できるということと、自社も無用にコストを削ることなく売上を伸ばしていける可能性があるということを両立できる可能性がある、ということです。

前述の機械設計誌の記事にも書いているのですが、同社はベンチャーで小規模という特徴を活かして、大手の工業用内視鏡メーカーが手をだしてきていなかった、品質を大事しながらも安価で数を揃えなければならない現場向けの内視鏡の開発をして注目され顧客を獲得してきました。

開発においても、小回りがきくことを活かして顧客の声を即製品に反映しながら行なっています。

今回のUSBを使ったアダプターの開発においては、顧客の声がどのように反映されたのか筆者は存じていませんが、そのような声が顧客がから上がっていたとしても全く不思議ではなありません。

現在、あらゆるアプリケーションにおいて画像はソフトウェアで処理されています。そのソフトウェアの多くはWindowsなどの汎用PCで動いているはずだ。また汎用PCも低価格化が進むと同時にグラフィックの性能も向上しています。

つまり、わざわざ専用の液晶モニターを使う必然性がなくなってきているといえるでしょう。

顧客にすれば、そのコストが削減されることは間違いなくメリットだとおもいます。

その一方で、SPIエンジニアリングの強みはやはり内視鏡本体の開発能力であろうと私は考えています。それを考えると専用液晶モニターを使う意味は薄いと考えてもそれほどはずしてはいないでしょう。

それよりも、自社の強みである内視鏡本体に既に充分な性能を持つ汎用品をつなげることは、ある意味で必然なのかもしれません。

このことは他のモノづくりのメーカーにも言えることができるでしょう。

今、自分が当たり前だと思っている専用品による製品構成が実は妥当なのかどうか、を一歩引いて、「もし自分がユーザだったら」と考えてみることも大事です

ハードウェアにせよ、ソフトウェアにせよ、かつては高価な専用品が必要であったが、今はあらゆるものが安価に調達することができます。本当に専用品が必要だということは少ないのではないでしょうか。

大事なことは「自社のコアな強みである製品本体」と「汎用のソフトやハード」をつなげることで、どのような新しいプロダクトやサービスを生み出すことができるか、ということに気がつくことだと思います。

お客も自分も喜ぶ組み合わせは何なのか?をこれまで以上に考えていきたいですね。


2012年6月25日月曜日

会議や取材でちょっと便利なiPadアプリ

先週は設計製造ソリューション展(DMS)の取材等々でずっと出張っておりました。

今週はいよいよ溜まった素材をまとめて記事にせねばなりません・・・。

さて、最近はいかなる仕事でもiPadが手放せなくなってきております。
今回のDMSのような取材もそうですし、あるいはそれ以外の仕事でも打ち合わせなどでもそうです。

使用するアプリによっては、Macよりも便利かもしれません。

iPadには色々なアプリを詰め込んでおりますが、入れているものは基本的にはどれも大活躍です。(あまり使わないものは既に消してしまっているという説もありますが)

その中でもインストールして以来、重宝しているのがこれ。

AudioNote


話しをきいて文章をまとめることが多い人は既にお使いの人も多いかもしれません。

ノートをとったところの録音が即座に再生される

iPhoneやiPadアプリでも録音するアプリは既に様々なものが存在していますね。でも、私がこれを重宝している理由はこれ!

「メモったところの録音が後で即座に再生される」

というところです。

取材などを生業にされる方は、ボイスレコーダーで録音される方も多いようです。

私も一瞬そうしていた時もありますが、ボイスレコーダーはあまり使用していません。理由は、

「録音を後で聴き直そうと思っても手間がかかる」

ということです。大体全部を聴き直そうなんてことは、まずありません。

それなりにメモってはありますから、そのメモを手がかりに文章を書き起こします。
録音を聞きたいのは、そのメモだけではちょっと内容に不安がある時です。

つまり・・・

そのメモの瞬間をききたいわけです。ところが、普通の録音ではそれを探し当てるのが結構めんどうなのです。

でも、このAudioNoteの場合には、メモった文章の中のある単語をハイライトすると、その時の録音が再生されるのです。

それはつまり、こういうことです。

1)AudioNoteを起動する
2)録音をスタートする
3)気になったところ、メモしたいことがあったら、ソフトキーボードなり、外付けキーボードでノートをとる
4)そうすると、メモと同時にその横にタイムスタンプが現れる。
5)これはつまり、そのメモに録音のタイムスタンプが紐付いたということ

ということで、今度は再生する時に、メモに紐付いたタイミングのところから再生されます。

AudioNoteでの再生


上記の画像の中でハイライトしているところがわかりにくいので赤い下線を引いていますが、そこをクリックすると時間のスライドバーが指定のところに移動します。

そこで再生ボタンを押せば、ちょうどその部分が再生されます。

もし、必要があるのであれば音声のみのエキスポートや、ノートの部分のみをPDFにしたりプリントすることも可能です。

会話の展開が早いとか、相手の言っていることに詳しくない、なんて時にはメモをとるだけでも苦労するということがあると思います。

そんな時もとりあえずキーワードのみを書いておき、あとでじっくり聞きなおすということも可能です。

つまり、書くことに時間をとられるのではなくて、キーワードのみをメモっておいて、後は相手との会話に集中することができます

取材のようなことだけでなく、会議の議事録をとることが多い方なんかにも便利かもしれません。

話しを聞いて、それをまとめるなんてことは誰にでもあるかもしれないので是非一度使ってみてはいかがでしょうか。

2012年6月22日金曜日

設計製造ソリューション展(DMS)2012 全体の感じ

出展社でもないのに、3日間連続で設計製造ソリューション展(2012)に行ってまいりました。

まだDMSに来ていない関係者には、「今年の状況はどうなの?」ということは聞かれるのですが、主観的な判断でいくと初日は台風4号の影響か若干低調かなと思いましたが(実際主催者発表でも昨年より初日の来場者が少なかったようです)ほぼ例年並みかな、と感じています。

もっとも賑わっているかどうかは、何を中心に見ているのか、ということにも依存しそうです。

縮小傾向のDMSに対して拡大傾向のM-TEC

どういうことかというと、一つは主催者のリードさんから出ているDMSのマップを見るとその傾向が見て取れます。

今年の出店者マップ

どういうことかと言うと、このうちの緑の部分が俗にいうDMSのゾーンです。かつては、この倍以上の広さがあったのですが、今となっては全体の1/4程度になっていますね。青で示されたバーチャルリアリティ展にいたっては端っこのほうになっていました。

変わって何が増えたのかというと、機械要素展(M-TEC)ですね。

そのDMSの中でも比較的賑わっていたところと、そうでないところがありました。

おとなしいCAD、CAEに対して賑わっていた3Dプリンタ

これまでDMSの主役であったCADとかCAEは相対的に静かでした。今となっては、CADもCAEも技術的には成熟してきていて、ユーザが驚くような新機能があるというわけではないという理由もあると思います。

その一方で賑わいがあったのが、3Dプリンタのセクションでありました。ここ1,2年にわたって製造業以外の一般のメディア、テレビなどの露出が増えてきたこともありますし、新しい材料がどんどん出てきたり、低価格機が出てきたり、あるいは様々な活用事例が出てきたりとエンドユーザ側も、もっと活用できるのではという機運が出てきたからかもしれません。

日本でもいよいよ発売開始のHD1500(V-Flashの後継機)

今回のDMSは、丸々3日間をかけてじっくりと回り、3Dプリンタを中心に様々な企業のブースを回って参りました。

詳しくは@IT MONOist上で

詳しいレポートは、今後アイティメディアの@IT MONOist上で連載していきますので、ご期待ください。